放射率ってなに?
放射温度計は使用する前に放射率の設定をしなくてはなりません。
この放射率をしっかりと説明しようとするとかなり難解な話になってしまうので、ざっくりと割りやすく説明させていただきます。
少し話が反れますが、東日本大震災で連日のように放射能がテレビで取り上げられていたころは、放射温度計って危険なんですか?という問い合わせがたくさんありましたが、放射能とはまったく関係がありません。放射温度計は基本的に危険なものではありませんのでご安心ください。
放射温度計の放射とは赤外線の放射エネルギーを感知するからであり、放射能とはまったくの別物です。
放射温度計とは測定対象が放射する赤外線エネルギーを感知して温度として表示します。
赤外線エネルギーを放射する割合が物体によって異なります。
例えばある物体が赤外線エネルギーを1放出するとしても、また別の物体は同じ温度で0.7しか放出しないこともあります。
1放出する物体は黒体と呼ばれ、黒体が基準となって他の物体(例えば食材)の放射率が決定されます。

こちらは食品の放射率をおおまかに示した表です。
肉や魚は0.98、フライパンは0.85となっています。
市販されている大体の温度計は標準が0.95付近に設定されています。
放射率は機種によって設定できるものと設定できないものがあります。
放射率が設定できない機種は0.95あたりに固定となっています。
放射率が設定できるものでも0.95、0.9、0.85など3点切り替えのものだったり、0.01ずつ細かく設定できるものもあります。
食品の温度測定で使用する場合は、3点切り替えか0.01ずつ放射率の設定ができるものがオススメです。
ただ、食品の放射率というのは大抵の場合上記の表の0.85から0.98の間に入ってきます。
ですので、0.01ずつ設定できる機種を購入してもその機能を少し持て余してしまうかもしれません。
私としては放射温度計の切り替えが簡単な3点切り替えの機種がいいかなと思います。
ステンレスは測定できないって本当?
食品の現場では材質がステンレスのものがたくさんあります。
錆が発生しにくい金属のため良く使われています。
しかし、放射温度計では基本的にステンレスの測定をすることはできません。
測定すると温度は表示されますが正しい温度ではありません。
放射温度計は赤外線エネルギーを感知して温度を表示します。
つまり光のエネルギーを測定しています。
ステンレスのように光沢があるものですと、いろいろな光(例えば蛍光灯や太陽光)を反射してしまってうまく測定ができないんです。
これはステンレスに限らず、キラキラしている物体や鏡面仕上げになっているものは測定することができません。
測定するには黒体テープや黒体スプレーといったものを貼り付けると正確に測ることができます。その場合には貼り付ける黒体テープや黒体スプレーの耐熱温度に気をつけてください。
食品の測定にオススメの放射温度計は?
それではオススメの放射温度計をご紹介していきます。
こちらは佐藤計量器製作所のSK-8920です。

表示部に食品の絵と共に放射率が書かれているので放射率を選びやすくなっています。パートさんも使用する現場ではこのような表示はとてもうれしいですね。
測定範囲は-40℃~250℃となっておりフライパンなどの熱いものから冷凍庫などでも使用することができます。(冷凍庫での測定はいろいろと注意が必要なので後々ご説明していきたいと思います)
ただ防水機能は無いので水には気をつけなくてはなりません。
しかし、3点切り替えで絵での表示もあるので、使いやすさとしてはかなり上位の放射温度計です。
こちらはシンワ測定の73014です。
放射率が0.01ずつ変更可能です。
放射率を細かく設定してより正確に測定したいときはこちらがオススメです。
測定範囲も-60~625℃まで測定できるので食品で使用するならまったく問題ありません。
放射率を0.01毎に設定できることも625度まで測定できるのも食品の測定では若干オーバースペックな気もしますが、価格的にはそこまで変わらないのでこちらを購入してもいいでしょう。
ただ、こちらも防水機能はありませんので水にはご注意ください。
「放射温度計とは」の記事でも書きましたが、放射温度計はレンズに水が付着していると正確に測定することはできません。
私自身は放射温度計に防水機能はいらないのではないかと思っています。
放射温度計に限らず温度計は精密機器ですので、その事を念頭においてあまり無茶な使い方はしないようにしましょう。
特に放射温度計は濡れたまま使用すると誤差が出ますので、防水型であっても放射温度計は濡らさないように気をつけましょう。