放射温度計の選び方とは
食品業界ではよくつかわれる放射温度計ですが、放射温度計と言っても性能や機能にいろいろな違いがあります。
使用する現場に合った製品を選ばなくては、無駄に高価な放射温度計を購入してしまったり、消耗が早くなってしまう事もあります。
これまでに、2回に分けて放射温度計の選び方について解説をしましたが、本日は、この記事を読めば放射温度計が選定できるようにしたいと思います。
しかし、放射温度計をしっかりと理解して使用していくには、詳しく書いた記事も読んでいく必要があります。
放射温度計はボタン一つで測定ができますが、しっかりと正確に測定をするにはある程度知識が必要です。
せっかく、放射温度計を購入して温度管理をするのであれば、しっかりと測定できるように知識を付けていきましょう。
放射温度計を選ぶうえで気を付けることはこの4つ
放射温度計を選定する場合は次の4つに注意して選定をしてください。
①温度範囲
②放射率
③距離係数
④防水性
なんだか聞きなれない言葉がいくつかありますね。
それぞれ解説をしていきましょう。
まず、①温度範囲ですが食品業界で放射温度計を使用する場合、それほど高い温度の測定は必要ありません。
放射温度計は一般的なものでも1500℃くらいまで測定できるものも販売されています。
温度範囲が広いものは精度が悪くなったり、本体が無駄にごつくなるので必要な温度範囲のものを選ぶ必要があります。
通常の食品工場や厨房の場合、測定範囲の上限は300℃もあれば十分でしょう。
また、下限は-40℃くらいまで欲しいところです。
一般的に冷凍庫は-18℃前後に設定されているので-40℃まで測定出来れば十分でしょう。
ただし、実際にはマイナス域を放射温度計で測定するのはとても難しいので、注意が必要です。
②放射率について
放射温度計は物体が発している赤外線を感知して温度の測定をしています。
物体が発する赤外線は一定ではなく、物体によって補正値を設定しなくてはなりません。その補正値が放射率です。
黒体と言われるものが基準となり、黒体の放射率が1とします。
ほかの物質は黒体よりも赤外線を放射する割合が低くなります。
例えば肉や魚は0.98、フライパンは0.85という風にある程度決まっています。
この放射率をしっかりと設定しないと温度に誤差が出てしまいます。
放射温度計によってこの放射率が固定のものだったり、3点切り替えのもの、0.01ずつ細かく設定できるものがあります。
食品の場合はそこまで細かい温度測定は必要ないのですが、できれば3点切り替え以上のものが好ましいでしょう。
パートさんなど多くの人が使う場合は、使いやすさも重要になるので、細かく放射率を設定できる製品よりも、3点切り替えの方が分かりやすいのでベストかもしれません。
③距離係数について
放射温度計は測定をするときに、どこを測定しているか分かりやすいように赤いレーザーが出るものが一般的です。

このレーザーマーカーは一点を示していますが、実際測定しているのはレーザーマーカーを中心とした円の中の平均値です。
これはカメラと同じで、カメラは被写体から離れれば離れるほど広い範囲を写します。
放射温度計を測定対象から離れれば離れるほど、広い範囲を測定します。
どれくらいの範囲を測定しているかを知るうえで、距離係数が重要となってきます。
距離係数は10:1や8:1という風に表されます。
10:1の場合、1M離れた場所から測定した場合、レーザーマーカーを中心として10cmの円の中の平均値を測定します。
8:1の場合、80cm離れたところから測定すると10cmの円の中の平均値を測定するという具合です。
食品業界で使用する場合は、あまり離れたところから測定することは少ないので10:1くらいの距離係数であれば問題ないでしょう。
8:1だと少し測定範囲が広くなってしまうかなという印象です。
もちろん20:1や30:1などであれば、それだけ測定範囲が狭くなるので問題ありません。
④防水性
放射温度計で防水の製品というのはまだまだ少ないです。
放射温度計自体が防水であっても、レンズに水が付着しているとその水の温度を測定してしまいます。
そのため、正確に測定するという事を重視すると、そもそも水に濡らさない必要があります。
ただ、そうはいっても水場で使う事の多い食品業界なのでできれば防水性があると安心ですよね。
防水性能が欲しい方は、「放射温度計は水にぬれていると正確に測定できない」という大原則を知ったうえで使用するようにしましょう。
おすすめの放射温度計
こちらはチノー製のIR-TE2です。
こちらは放射温度計には珍しい防水機能付きです。
放射温度計は防水機能が付いていない機種が多いのですが、そのためか中心温度計と比べると故障を起こすサイクルが短いです。
測定温度はー40~300℃ですので食品の現場で使うにはぴったりです。また、衝撃にも強く落下させてしまっても壊れにくい使用となっています。
金額は定価で9500円(税別)と安価です。
食品の現場ではそれほど難しい測定は要求されないので、これを1台持っていれば放射温度計の測定で困ることは無いでしょう。
こちらは佐藤計量器製作所のSK-8920です。
表示部に食品の絵と共に放射率が書かれているので放射率を選びやすくなっています。パートさんも使用する現場ではこのような表示はとてもうれしいですね。
測定範囲は-40℃~250℃となっておりフライパンなどの熱いものから冷凍庫などでも使用することができます。(冷凍庫での測定はいろいろと注意が必要なので後々ご説明していきたいと思います)
ただ防水機能は無いので水には気をつけなくてはなりません。
しかし、3点切り替えで絵での表示もあるので、使いやすさとしてはかなり上位の放射温度計です。
さいごに
放射温度計で正確に測定するには、しっかりとした知識が必要です。
しかし、使い方を覚えてしまえば一瞬で非接触で測定できる製品ですので、これほど便利なものはありません。
放射温度計を選定するうえで重要なのは
①温度範囲
②放射率
③距離係数
④防水性
です。
自分の使用環境にはどれくらいの性能が必要なのかしっかりと考えて選定をしていきましょう。