温度計の精度とは?分解能との違いや校正方法を徹底解説

温度計を使用する現場において、温度計の精度は商品の品質を左右する重要なポイントです。

しかし、温度計の精度について、よく理解しないまま使用している人も多くいます。

この記事では、温度計の精度や、温度がズレているかの確認方法について解説します。

管理人
この記事は、測定機業界で10年以上温度計を提案してきた管理人が執筆しています。

温度計の「精度」と「分解能」の違いってなに?

温度計を選ぶときや使っているときに、よく耳にする「精度」と「分解能」。
似ているように見えますが、意味は大きく異なります。   

精度とは「数値がどれだけ正しいか」

精度とは、温度計が表示する数字が「本当の温度」とどれだけズレる可能性があるかの値です。   

たとえば、カタログに「精度 ±0.5℃」と書かれている温度計があるとします。本当の温度が「75.0℃」の場合、その温度計は「74.5℃〜75.5℃」の間の数字を表示しますよ、ということを意味しています。   

分解能とは「どれくらい細かく表示できるか」

分解能とは、温度計が「どれくらい細かい温度の変化まで読み取れるか」という目盛りの細かさです。   

画面の数字が「0.1℃刻み(例:25.1℃、25.2℃)」で変わるなら、その温度計の分解能は「0.1℃」です。   

分解能が高くても、精度が良いとは限らない!

ここが一番の注意ポイントです。
デジタル温度計には、画面上の表示だけを「0.01℃刻み」のように細かく表示されるものがあります。   

しかし、温度計の内部センサーが古くなったり狂ったりしていると、「細かく間違った数字を出し続ける温度計」になってしまいます。   

温度計を選ぶときは、画面の数字が細かく表示されるか(分解能)だけでなく、かならず「精度が±何℃なのか」を確認することが大切です。   

項目精度分解能
意味ただしい温度からどれだけズレる可能性があるかの値画面で表示できる一番細かい単位(目盛り)
表記の例±0.5℃、±1.0℃ など0.1℃刻み、1℃刻み など
間違えるとどうなる?狂っていると加熱不足で食中毒の原因に高分解能でも精度が悪いと間違った数値を信じてしまう

なぜ食品衛生管理(HACCP)で温度計の精度が重要なの?

HACCPに沿った衛生管理では、加熱殺菌の温度や冷蔵庫の保管温度を正しく測って記録することが決められています。このとき使っている温度計のが狂っていると、さまざまなリスクが発生します。   

食中毒事故につながる危険がある

温度計が実際より高い数値(プラスの誤差)を示していると、お肉の中心温度がまだ73℃しかないのに、画面には「75.0℃」と表示されてしまいます。
加熱完了だと勘違いして出荷してしまうと、食中毒菌が生き残り、重大な事故を引き起こしてしまいます。   

味や品質が落ちてしまう

逆に温度計が実際より低い数値(マイナスの誤差)を示していると、十分加熱できているのに「まだ温度が足りない」と勘違いして余計に加熱してしまいます。
その結果、食材がパサついたり焦げたりして美味しさが損なわれます。   

全商品の回収・廃棄になる可能性がある

一番怖いのが監査での指摘です。
定期チェックや監査の際、使っている温度計が大きく狂っていることが発覚すると、「過去にその温度計で測って記録した商品は、すべて正しい温度管理ができていなかった」と判断されてしまいます。
たとえ食中毒が起きていなくても、その期間に作った商品をすべて回収・廃棄になる可能性があります。
そのような事態になれば、会社にとって大きな損害にな。   

現場で使う温度計は、中心温度計も冷蔵庫用も「精度 ±0.5℃〜±1.0℃以内」のものを選び、社内ルールで「±1.0℃以上のズレが出たら交換・修理する」などと決めておくのが安心です。   

温度計のタイプごとの特徴と精度の注意点

温度計にはいくつか種類があり、それぞれ測り方や精度の保ち方にコツがあります。   

刺し込み型(中心温度計)

お肉や惣菜に針(プローブ)を刺して中心の温度を測るタイプです。   

  • 精度の特徴: ±0.5℃〜±1.0℃前後の高精度なものが多く、数秒〜十数秒で測れます。   
  • 気をつけること: 針の先端(先端から1.5cm〜3cmあたりの位置)にセンサーが入っているため、食材の一番分厚い真ん中にしっかり刺さないと正しい温度が測れません。また、水洗いできる「防水仕様(IPX6やIPX7など)」でないと、隙間から水が入って精度が狂う原因になります。   

放射温度計(非接触タイプ)

ボタンを押すだけで一瞬(約0.5秒)で表面温度が測れる便利な温度計です。   

  • 精度の特徴: 食材の入荷時の検品やフライパンの温度確認に向いています。   
  • 気をつけること: 対象物に触れずに赤外線を捉えて測る仕組みのため、測るものによって「放射率(赤外線の出しやすさ)」を設定する必要があります。食品用なら放射率が「0.85〜0.98」に合わせられるものや、食品イラスト付きで設定できるものがおすすめです。また、湯気が出ている熱湯を測ると湯気の温度を拾ってしまうため、正確に測れません。   
【食品用】専門家が選ぶおすすめ放射温度計8選【非接触温度計】

温湿度計・データロガー

冷蔵庫や作業場に設置して、自動で温度や湿度を記録し続ける装置です。   

  • 精度の特徴: 長時間連続で記録できるため、HACCPの自動化に大活躍します。   
  • 気をつけること: エアコンの風が直接当たる場所や、ドアの近く、直射日光が当たる場所に置くと正確な数値が測れません。また、湿度センサーはホコリや油煙が付くと数字がずれやすいため、定期的な買い替えやチェックが必要です。   
温湿度計データロガーのおすすめ5選!Wi-FiやUSB接続の違いを分かりやすく解説

温度計の精度を保つ!自分でできる簡単点検(校正)方法

温度計は長期間使ったり、落としたりすると、少しずつ数字がずれて(狂って)いきます。
そのため、定期的に数字が合っているか確認する「校正(こうせい)」が必要です。   

メーカーに点検に出すこともできますが、社内で簡単にできる点検方法をご紹介します。   

0℃の点検(氷水チェック)

  1. 細かく砕いた氷を容器にたっぷり入れ、少しだけ水道水を加えます。   
  2. よく混ぜて「シャーベット状の氷水」を作ります。   
  3. 温度計の針を刺して約1分待ち、表示が「0℃」になるか確認します。   

100℃の点検(沸騰水チェック)

  1. 電気ケトルに水を入れて完全にお湯を沸かします(やかんは直火の熱を拾いやすいため電気ケトルがおすすめです)。   
  2. 沸騰した注ぎ口の蒸気やお湯に温度計の針を入れて約1分待ち、「100℃」になるか確認します。
    • ※容器の底や壁面に針が触れると熱くなって間違った数値になるので注意してください。   

社内で試すときの判定ルール

社内での簡易点検の場合、まわりの部屋の温度などの影響を受けるため、カタログスペック(±1.0℃)通りにならないこともあります。
そのため、社内ルールとしては「±1.5℃や±2.0℃以内のズレなら合格」と少し余裕を持たせておくと運用がスムーズです。   

1台「社内基準器(標準温度計)」を持っておくのがおすすめ!

日常的にたくさんの温度計を使う現場では、普段は使わずに大切に保管しておく「高精度な標準温度計」があると便利です。
例えば、最高精度±0.15℃を誇る「ピーティーサーモ プレミアム」のような高精度デジタル温度計があります。この温度計と、社内の他の温度計が狂っていないかをいつでも比べられます。   

もし点検で±2℃以上ずれている温度計が見つかったら、新しいものに買い替えるか修理に出しましょう。   

初心者・食品現場におすすめの高精度温度計比較

現場で使いやすく、精度もしっかりしているおすすめの業務用温度計を一覧にまとめました。   

商品名 / 型番メーカータイプ測定精度主な特徴・おすすめ用途
ピーティーサーモ プレミアムサーモポート接触式(基準器用)±0.15℃最高クラスの高精度!社内の温度計を点検するための基準器に最適
SK-100WP佐藤計量器製作所接触式±0.5℃大型画面で見やすい!丸洗いできる完全防水型(IP67)
MT-812マザーツール接触式(標準防水)±0.5℃75℃・85℃のタイマーや温度警告LED付きで加熱管理に使いやすい
AD-5605PA&D接触式(スティック)±0.8℃約10秒でスピード測定!手軽に使えるリーズナブルな1台
O-280ドリテック接触式(スティック)±1.0℃5色カラー展開!肉用・魚用など食材ごとの使い分け管理に便利
IR-TE2チノー非接触温度計±1℃〜±2℃放射温度計としては珍しい「丸洗いできる完全防水型(IP67)」
SK-8920佐藤計量器製作所非接触温度計±2℃または±2%食品イラストボタン付きで、放射率の設定が誰でもカンタン!
TR72A2-Sティアンドデイデータロガー±0.3℃[cite: 7]スマホやクラウドで自動記録!冷蔵庫や部屋の温度を遠隔監視

用途に合わせて、毎日の加熱測定には「MT-812」や「SK-100WP」、搬入時の素早い検収には「IR-TE2」、社内の点検用には「ピーティーサーモ プレミアム」のように使い分けるのがベストです。   

まとめ

温度計の「精度」とは、画面の数字の細かさではなく、「その表示されている数字がどれくらい正しいか」という一番重要な指標です。   

HACCPによる衛生管理が当たり前になった今、数字の狂った温度計を使い続けることは、食中毒のリスクや全商品廃棄のリスクを抱え続けることになります。   

  1. 表示の細かさ(分解能)ではなく「精度±何℃か」を見て選ぶ   
  2. 氷水や熱湯を使って、定期的に0℃・100℃のズレがないか点検する   
  3. できれば社内チェック用の標準温度計(基準器)を1台用意する   

この3つのポイントを押さえて正しく温度管理を行い、安心・安全な商品づくりに役立ててくださいね!