HACCPの手引書にある中心温度計の校正について解説

HACCPの考え方を取り入れた衛生管理のための手引書とは

HACCPの制度化(義務化)が決まって、すべての食品事業者が対応に迫られています。

大企業はHACCPを導入済みのところがほとんどですが、個人経営の飲食店など小規模な事業者は、まだまだ導入率は低い状態です。

そのため、ある程度大きな規模の事業者はHACCPをそのまま取り入れ(旧A基準)、小規模事業者はHACCPを簡略化した「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理(旧B基準)」を導入することになります。

簡略化したからと言ってHACCPの知識がない人が、HACCPの考え方を取り入れた衛生管理を行うのは少し難しいのではないでしょうか。

そのような状況を改善するために、各業界団体が導入のための手引書を作成して、厚生労働省がホームページで公開しています。

「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理のための手引書

この手引書は挿絵や図解も豊富なので、HACCP初心者の方にも理解しやすい内容となっています。

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手引書内の中心温度計の校正について解説

中心温度計はHACCPを導入しようとすると、必ず準備しないといけない測定器です。

手引書の中でも何度か登場するのですが、小規模な一般飲食店向けの手引書(詳細版)の中に校正の仕方の記載があります。

小規模な一般飲食店向けの手引書

上記のような内容で、中心温度計の校正方法について書かれています。

こちらの方法で問題なく校正できますが、初心者の方には少し理解が難しいので、もう少し詳しく説明をしたいと思います。

中心温度計の校正とは

中心温度計に限らず測定器は経年変化などにより、測定値がずれていきます。

そのため、定期的に温度がずれていないかの確認をしなくてはなりません。この温度がずれていないかの確認作業を校正といいます。

それでは具体的にどのような作業を行えばよいのでしょうか。小規模な一般飲食店向けの手引書に沿ってみていきましょう。

0℃の校正

中心温度計の校正を行う場合は基本的に0℃と100℃の2点で行います。

砕いた氷を用意します。氷水に温度計のセンサーを入れ、静置(約1分)後に表示温度が0℃になることを確認します。

氷の量が少ないと容器内の温度にむらが出てしまうことがあります。ステンレスのボールに入れて氷水を作るのであれば、表面はすべて氷で埋まるくらいにしましょう。

もし、時間的に余裕があるのであれば、氷を削ってシャーベット状にするとより安定して0℃になります。

氷水にセンサーを入れておく時間が1分と記載がありますが、これはあくまで目安の時間です。

反応速度はセンサー種類や形状、周囲の環境によっても変わってきます。一律に1分とするのではなく、温度が安定するまでと覚えておくとより正確に測定ができるでしょう。

安定したかどうかの判断は難しいところなのですが、中心温度計の一番下の桁が±1の幅で動く程度でしたら安定したと判断して問題ありません。

100℃の校正

100℃の校正は、まず電気ケトルに水を入れ沸騰させます。

沸騰したら注ぎ口に温度計のセンサーを挿入して、沸騰蒸気の温度を測定します。そして約1分後に表示温度が 100℃になることを確認します。

普通は鍋などで水を沸騰させて100℃の測定をするところですが、手引書では電気ケトルでの校正を推奨しています。

その理由として、電気ケトルを使用すれば、ヤカンなどで水を沸騰させたときの火による輻射熱の影響を受けることがないからです。

輻射熱とはいろいろなところから反射されてくる熱エネルギーのことなのです。

コンロの火などが発する熱エネルギーが壁などに反射して、温度センサーが影響を受けてしまうことがあります。

そのため、今回の手引書では電子ケトルの使用を推奨しています。しかし、一般的には鍋やヤカンなどで校正をするのが主流ですので、電子ケトルを使用しなくても問題はありません。

ケトル以外で校正する際は、センサーの先端が鍋やヤカンに触れないでお湯にだけ触れる状態にしましょう。またセンサーの感温部(先端の針状になっている部分)がすべてお湯に浸かるようにしましょう。

どうなれば校正に合格なのか

0℃と100℃で校正をすると解説しましたが、ここでは校正に合格したと判断するための考え方について説明します。

まれに、「0℃と100℃ぴったりにならないとだめだ」と思っている方がいらっしゃいますが、それは間違いです。

今回お伝えしている校正はあくまで簡易的な校正方法であり、本来はメーカーに預けて、基準となる温度計と比べて行うのが正しい方法です。

厨房などの現場での校正で、ぴったり0℃と100℃になることはまれでしょう。

さらに、測定器には誤差があります。誤差は温度計の取扱説明書を見ると精度として表記がされています。

例えば、精度が±1℃だった場合、上下に1℃ずつずれる可能性があります。

取説に記載されている精度を校正をするときの合格基準にしてもよいのですが、これだと不合格になる中心温度計が多く出てきます。

先ほどお伝えしたように、あくまで簡易的な方法で校正を行っているため、中心温度計の精度以上に誤差が出ることも多くあります。

そのため、製造している食品の影響が出ない程度に合格範囲を広げるのが、日々の校正の負担を少なくするためにも得策といえるでしょう。

例えば、±2℃を校正の合格基準にしても製造上で問題ないのであれば、温度計の校正基準としても問題がないと判断できるでしょう。

おすすめの中心温度計

こちらはCHINOのMF500です。

こちらは防水機能を高めるため電池の交換ができませんが、IP67です。

一日3時間の使用で2時間以上使えますので、電池交換ができなくても問題は無いでしょう。こういった一体型の温度計は2年経つ前に破損してしまうことがほとんどです。

IP67で防塵性能もあるため、小麦粉などの粉が舞っている環境での使用もできることがポイントです。

精度も±0.5℃( -9.9~99.9℃ の範囲)で、反応速度もわずか2秒です。

丸洗いもできて言うこと無しですね。

こちらは佐藤計量器製作所のSK-270WPです。

こちらもIP67で防塵・防水性能ともに文句ありません。

丸洗いできるのはもちろんのことですが、SK-270WPは本体材質がポリカーボネートでできているので消毒のためにアルコールで拭くこともできます。

本体材質はABS樹脂でできているものが多いですが、ABS樹脂はアルコールで拭くと細かなひび割れができてしまうことがあります。

ひび割れができるとひびに雑菌がつまり衛生的によくありません。

アルコール消毒もお考えでしたらSK-270WPはとてもオススメです。