放射温度計の扱いは実は難しい
ボタンを押すだけで手軽に測定できる放射温度計ですが、実はしっかりと測定しようとすると難しいんです。
例えば、距離係数・放射率なんかを考えて測定をしなくてはなりません。
この辺りについては下記の記事で詳しく説明しているので読んでみてください。
本日は、食品の現場で測定するであろうものが、実際に放射温度計で測定できるのかを解説したいと思います。
これ測定できる?~食材~

まずはお肉です。
こちらはもちろん測定できます。放射率は0.98に設定してください。
機種によってはピンポイントで0.98に設定できないことがありますが、その場合は一番近い放射率に設定をしてください。
ちなみにこのお肉のイラストのようにパックに入ってラップで巻かれている場合は必ずラップを取り外してから測定をしてください。
ラップが付いたままですとラップの温度を測定してしまいます。

次は魚です。
こちらももちろん測定できます。放射率は0.98に設定してください。
一つ注意しなくてはならないのは、魚は身幅が狭いので離れたところから測定をすると魚を置いてある台など後ろのものも一緒に測定してしまう可能性があります。
使用している放射温度計の距離係数をしっかりと頭に入れて測定をしてください。
ちなみに、魚の状態(切り身だとか未加工のじょうたいだとか)はあまり気にする必要はありません。放射率はほとんど変わりません。

野菜・果物ももちろん測定できます。放射率は0.98です。
ねぎのように細いものやミニトマトのように小さいものなどありますので、先ほどの魚のように距離係数を頭に入れて測定をするようにしましょう。
これ測定できる~食品~

次はカレーや煮物です。
こちらも基本的には測定できるのですが注意が必要です。
煮込んでいる間は湯気がでます。
これが大量に出ていると放射温度計は湯気の温度も測定してしまうので、実際の煮物の温度とは違ってしまう事があります。
測定の際はいったん火を止めて湯気が少なくなってから測定をするようにしましょう。
また、その際は鍋の上部分と下部で温度差が出てしまう事があります。
放射温度計は一番上の部分しか測定できませんので、しっかりと混ぜて上部と下部の温度差を無くしてから測定をしてください。
放射率は0.98にしてください。

次は冷凍・冷蔵で運ばれてきた食品の測定です。
食品の受け入れの時にしっかりと冷やされて運ばれてきたか放射温度計を使ってチェックしますよね。
こちらももちろん測定可能ですが、注意が必要です。
まず、放射温度計は本体の温度と気温が違っていると誤差が出ます。
例えば、暖房のきいた事務室から倉庫に放射温度計をもっていって測定をすると、放射温度計は暖房の効いた部屋の温度になっているので、倉庫の気温との差が出てしまいます。
この状態で測定をするとかなりの誤差が出ますので、最初から倉庫などに受け場に一台置いておくようにしましょう。
また、先ほどもお伝えした通り放射温度計は表面の温度しか測定できません。
そのため、冷やされて運ばれてきても測定をするまでに時間をかけていたら表面の温度は上がってしまうので、手早く測定をするようにしてください。
放射率は食品のパッケージなどによって変わりますが概ね0.95くらいで測定をしましょう。
これ測定できる?~調理器具~

調理に使うステンレスの台はどうでしょうか。
こちらは非常に難しいので測定できないと思っていいでしょう。
放射温度計は物体が発する赤外線を感知して温度を表示しています。
そのため、ステンレスのように光っているものは外から入ってきた光を反射してしまうのでうまく測定することが出来ません。
どうしても測定したいという場合は黒体テープを使用します。
これをステンレスなどの光っている物体の表面に張ることで放射率が1となりますので、基本的になんでも測定ができるようになります。
ステンレス製品全般は光っているので測定する必要がある場合は、黒体テープを使用しましょう。

フライパンも測定できます。放射率は0.95に設定しましょう。
たまに、ステンレスのようにピカピカ光っているフライパンがありますが、先ほどのステンレスの台とどうように光っているフライパンは測定できません。
さいごに
放射温度計のこれ測れる?はいかがでしたか。
重要なのは距離係数と放射率です。
みなさんが実際にこれは測れるのかな?と思うものが出てきたとしても
本日の具体例を応用して考えていただければ、ほとんど解決するはずです。
まずは第一段階として、光っているものは測定できない・小さかったり細いものは距離係数を頭に入れておく、という事を覚えて測定をしていきましょう。